第3章 本編で言う第一章 第一話
傷は蘭が三歳の時にできた。
「むしろ悪化してるよね。」
悠と令は蘭の傷の原因を知っている数少ない仲間だった。
「まぁ普通の古傷じゃないからな。今日は部屋で安静にしてろ。」
実は令が一番心配していた。いつも令は冷たいが、誰よりも皆のことを考えている。
「え~」
まだ見たい、といった様子だ。
「じゃあ兄さん、華ちゃん、そろそろ義姉さんのお見舞い行こう。蘭ちゃんだけ置いて」
悠も蘭を早く部屋に戻したかった。蘭は純粋な天狗ではないうえ、両親が一族の裏切り者として処刑されたのだ。先々代はこの子達に非は無い、と郷に置いてくださっているが、一部の者には蘭達は非難されている。
「そうだな。」
蘭は極度の寂しがり屋だ。どうせ付いてくる。
「そうしよ、蘭はまだ居たいみたいだし。」