第2章 先々代の部屋
「じ~ぃちゃん♪やほ」
足音もなく勝手に部屋に入ってきたのは孫の蘭だった。行く詳細を言わずに出て行った。本当にこの子は蘭なのか、少し疑った。
「蘭!?」
蘭には双子の妹、華が居る。顔で区別はきっと親でも出来ない。だが、テンションや喋り方などは明らかに蘭だった。
「ねぇねぇ、どっかの部屋ちょーだい。」
来て二言目がこれだ。華にはこんなことできない。
「いきなり来て何言ってる」
「あやめの隣空いてるでしょ。」
全く話を聞いていない。こういう子なのだ、蘭は。
「好きなとこ使え。でもなんであやめの隣空いてるってわかった?」
話を聞いている聞いていないなど問題では無い。部屋割一覧なんて作った事無い。なのにあやめの隣が空いてると分かった、それが問題だ。部屋割が他の一族にばれることは命に関わること。寝ている間に当主が襲われたら困るからだ。
「だってあやめの隣はあたしの部屋って決まってるじゃん♪あ、ねぇあたしが帰って来たこと言わないでよ」
やっぱりこの子は自由な子だ。
「この五年で変わったこと知ってるか?」
この子が知らないはずは無い。