第5章 六年前
理解できない。何が大丈夫なのだろう。あの村の外には出たことが無い。今は外だが。村の中だけで生活が成り立ったからだ。仕事もあるし、スーパーもある。そこそこ大きな集落だったと思う。ただTVで見るようなコンビニや駅は無かった。
「じゃあ今までどうやって学校に通えていたんでしょう…」
「あの村の住人全員の戸籍無いんじゃないか。たぶん引っ越して来た人は引っ越す前の住所で登録されていると思う。実際お前の母親の住所、東京のど真ん中だったぞ。」
どうやってそこまで調べたのだろうか。
「そうですか…じゃあ学校の心配はしなくていいんですね。」
「勉強はしなきゃいけないよ。」
痛い所を突かれてしまった。
「はい…」
「でも、そうは言ってもどこで誰に教えてもらうんですか?」
「うーん…あやめ、できるか?」