第5章 六年前
「ありがとうございます。」
頑張って笑顔を造った。
「部屋は此処。服はあの箪笥に入ってるから。飯は悠が届けに来る。あまり出歩かないように。いくら楊様の御子息が良いと言っても、余所の者が住んでるとなったら反感を買うからな。手洗いも風呂も付いてる部屋にしてある。」
令さんは分かりにくい優しさで守ってくれる。
「じいさまと父さん母さんには話してある。今度俺のいとこも連れて来るからな。」
変な笑顔になっていないだろうか。少し無理していると思う。笑顔が造れない。
「じゃあ後でな。」
二人とも行ってしまった。
「桃、すること無くて暇でしょ。本持ってくるね。」
悠も行ってしまった。
「ついに一人になっちゃった…」
泣きそうになった。
「あら、この部屋誰かいるのかしら。」
襖が開いた。向こう側に立っていたのはとても綺麗な美人さん。