第4章 十年前
「桃、藤さんと飛鳥さん…唯ちゃんと幸助君の家がな…全焼して…」
村長らしき人が桃に話しかけていた。
「唯ちゃん達…皆、死んじゃったんだよ…」
皆…?皆って誰と誰?死んじゃった…?
ショックで何も考えられなかった。涙も声すらも出ない。
「泣いてもいいんだよ、桃。」
悠が優しく桃に囁いた。泣くのを我慢している訳ではない。この状況を理解できていないのだ。
「うん…ありがとう…今日はもう家でゆっくりする。じゃあね、悠、令君、匡君。」
ぼーっとした様子で桃は帰って行った。
「あの、村長さん…桃ってどんな子ですか?」
なぜか悠は桃について知りたかった。昔住んで居た所や性格、歳も知りたかった。とにかく知りたいと思った。今まで読んだどんな本より興味が湧いた。こんな感情初めてだった。