第4章 十年前
気づいたら桃は自分の服の裾を掴んで震えていた。しかも泣きそうなくらい目が潤んでいた。
「本当の家族じゃないんだ…お父さんもお母さんも。だから、もし皆居なくなっちゃったら悠が家族になって?僕を引き取ってくれる人なんていないから…。お嫁さんだったら、一緒に暮らせるでしょ?」
村の皆が居なくなるのを覚悟しているようだった。
「桃ちゃん、そんな縁起でもないこと言わないの。きっと皆大丈夫だから。」
悠は桃と初めて会った気がしなかった。遠い昔に会っていたような気がする。でも全く思い出せない。思い出そうと考えながら山を下って行った。
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「悠、桃!」
麓に着くころにはもう火は消えていた。
「匡様!」
先に下りた二人は村の人達と一緒に深刻そうな顔をしていた。