第4章 十年前
「匡様、下のほうに火が見えませんか?」
麓のほうに炎が見えた。
「火…?あれは…火事だ!」
かなり大きな火だった。
「ここの近くには僕の村しかないはず…」
桃は何も考えられなかった。あの村はとても小さく、人口は百人くらいしかいないため全員が全員のことを知っている。しかもその火は村が壊滅しそうなくらい大きな火だった。死人が出ることは確実だ。
「悠、桃、二人は後から下ってこい。令は俺と一緒に飛んでいくぞ。」
飛ぶ、という言葉が少し気になったが桃はスルーした。
「桃ちゃんが居ますが…」
だが、令はスルーしなかった。
「ちっ。まぁいい、走るぞ令。」
二人はあっという間に見えなくなってしまった。
「ねぇ悠…?だっけ。もし、誰も村に居なくなったら僕を悠のお嫁さんにして?」