第6章 *記憶
私は、何の疑いもなく、ドアを開けた。
ーーこのとき、ドアを開けることを少しでも躊躇っていたのなら、何か変わっていたのかもしれない。
ドアの前には、ひとりの少女が立っていた。
それが誰なのか、一瞬で分かる。
彼女は、私と目が合った瞬間に、大きく目を見開く。きっと私もそうだったに違いない。
どうして、彼女ーー里沙がここにいるのか。
そう考えるよりも早く、私はドアを閉めようとした。
けれど、それは叶わない。
なぜなら、里沙が、ドアを押さえたからだ。
「あんた…ッ、いい加減にっ!」
里沙が私を睨みながら言う。
私は、そのあとに続く言葉を知っていた。