第6章 *記憶
彼女は首を傾げる。
「んー…理由なんて無いけど…」
『何となく』ってところか。どこか予想通りのその答えに、私は何を思ったんだろう。何を、考えたのだろう。
「行かないよ」
気がつけば、そう呟いていた。
視界の端で、希美が目を見開くのが分かる。
「学校には、行ってない」
あれからずっと、この家は「わたしのせかい」だ。それをバカだと思うなら、幼いと思うなら、いっそ笑って欲しい。
そのとき、電子レンジから、チーンという音が鳴った。その音で、私ははっと我に返る。
「あ、昨日の残りだけど…」
「うん、良いよ」
昨日もその前の日も、こんな会話を交わした気がする。いつも夕飯の残り出してるからなぁ。
私は電子レンジを開け、チャーハンがのった皿を取り出す。もうこの熱さにも慣れた。