第10章 失われた記憶の真相...
翔side
ざっと仕事を終わらせた翔。
「......。」
(やはり......完全にユリの記憶が消えたわけではない、か......)
ユリとリョウガの一部の記憶を消したあの紅い石......
あの石は代々御子柴家に伝わるもの、俺はユリを見つけたあの日......
父さんから譲り受けた。
あの石には不思議な力がある、それは狼にしか効果が現れない“紅月の石”。
この石さえあれば狼でも人狼でも......自由に自分が思うように操れる。
それが、狼世界の王族でも......。
だが今はユリの身体のほうが心配だ。
すぐにでも行かなくては......
__ガチャッ
「リョウガ、ユリは目を覚ましたかい?」
リョウガは首を横に振り、
「まだ......ねぇ父さん、」
「......どうしたんだい?」
「俺ね?」
「......。」
「なにか大事なことを忘れているような気がするんだ。
俺は......どこから来たの?」
リョウガも......完全に記憶をなくしたわけではないのか......
リョウガは俺の指示により五十鈴動物園から連れ出してきた狼だ。
元々五十鈴動物園は我々が経営しているもの、
本来リョウガはユリと同じように森から連れてきた人狼だ。
正確には保護をしただが......。
リョウガはハイイロオオカミ族の“元”王子、
リョウガの両親である族の王と女王は海外の狩人によって殺されてしまった。
その際リョウガを保護し、心の傷を癒す為
五十鈴動物園に設備されている広場に入れた。
ちなみにリョウガの左目の傷、
あれは両親が殺された際にナイフで切られた後だ。
だがリョウガはなんとかその場を逃れ生き延びることができた。
その際に保護したのがリョウガだった。