第6章 〈エース〉あなたがいない世界は
バッコーン!!!
白ひげ海賊団の隊員たちが放った砲撃が赤犬へ直撃する。それに加え、ジンベエが赤犬とサーヤの間へ入り、攻撃に備えて構えている。
「サーヤ!」
エースは倒れかけたサーヤを抱き留めた。
「ハァ……ハァ……エー……ス……」
「大丈夫か、サーヤ! 今、船医を呼ぶからな! 少し待ってろ!」
エースは涙を滲ませた黒い瞳をサーヤに向ける。しかし、エースの言葉に首を振った。
「……もう、私は……助からない……」
「何言ってんだ、サーヤ!」
彼女はエースに抱き締められながら、口元を緩ませた。
「じ、ぶんの……最期くらい……分かるわ……」
ー内臓を焼き尽くされている。助かる手立ては何もない。
「ふざけんな! 俺より先に死ぬなんて、絶対ェ許さねェ! おい、早く! 早く傷の手当てを!」
「エース」
首をあちこちへ向けて叫んでいる彼を、サーヤは静かに諭した。ーーエースだって気付いているはずだ。もう、彼女が助からないということを。
「……クソッ……」
エースは悔しそうに顔を歪ませた。
「……エー……ス」
ーー彼を助けたら、伝えたいと思っていたことがたくさんあった。
「わ、たしは……あな、たを庇ったこと……後悔してないわ。あなた、だけでも、生きてて……ほしかった」