第6章 〈エース〉あなたがいない世界は
「あァ……」
目の前が涙で霞む。これが彼女と交わす最期の言葉となるのに、彼女の顔を見ることができない。
「あ、なたを……守るためなら、悪にだって、なれた……。ここ、にいる、みんなそうよ」
「あァ……あァ……」
何度も何度も頷く。みんなが助けに来てくれた時に、痛いほど分かった。とても嬉しかった。
「たとえ、世界の全てが……あなたの……敵だとしても、わた、しだけは……あなたを守りたいと……思った……」
「……」
エースは唇を噛み締めた。ーーそれはエースが海賊王の血を引いていることに関係していた。でも、親なんて関係ない。サーヤが愛したのは海賊王の息子ではなく、ポートガス・D・エースという男だったからだ。
「だから、笑って……」
サーヤはエースの頬を片手で包み込む。彼の頬には涙が流れた。
「……あァ……」
涙が止まらない。自分が原因で彼女を失うことになってしまった。後悔しても、仕切れない。
「あと、最期に……お願い、が……あるの」
「何だ?」
頬に添えられた彼女の手を掴んで、エースは聞いた。
「も、しも……」
ーまた、人間に生まれ変わることができたなら……。
「また、私を……見つけて、ほしいの……」
ーその時は、また……。
「また……あなたを……」
サーヤの瞳がすーと細くなっていく。