第6章 〈エース〉あなたがいない世界は
数ヶ月前、白ひげ海賊団の船の上である事件が起こった。それはこの船で唯一のタブー「仲間殺し」だった。犯人はマーシャル・D・ティーチ。サーヤと同じ2番隊隊員で、エースの部下だった人間だ。殺されたのはサーヤとエースと仲の良かった4番隊隊長サッチ。どうやら、サッチが敵船で見つけた悪魔の実が原因で殺されてしまったらしい。
雷が鳴り響いていた夜が明け、サッチの無残な姿を見たエースは怒りと悔しさと悲しさで冷静さを欠けていた。そのため、逃げたティーチを追う準備を勝手に整えてしまった。しかし、白ひげはティーチを追うことを禁止してしまったため、白ひげ海賊団の船員たちはエースを止めようとした。
「やめろよい、エース! 頭を冷やせ!」
「親父が今回は特例だって言ってるんだ! ティーチは追わなくていい!」
2人の大きい船員がエースの腕を掴んで行かせまいとしている。しかし、エースはそれを振り切って叫んだ。
「離せ! 奴はおれの隊の部下だ! これを放って置いて、殺されたサッチの魂はどこへ行くんだ!」
「エース」
とても取り乱れている様子のエースを白ひげが静かに呼んだ。
エースは仲間の腕を振り切るのをやめて、驚いたように瞬きをして白ひげを見た。