第6章 〈エース〉あなたがいない世界は
三日月の形をした人工島の上にぽつんと1つ立っているものがある。ーー処刑台だ。その上には2人の男がいる。1人は膝をついていて、もう1人はその人を見ながら立っている。それを見て、少女は心の中で吹き荒れる黒い物を抑えようとしていた。
「サーヤ」
後ろから呼ばれた声に振り向くと、そこにはパイナップルと言ったらいいのかバナナと言ったらいいのかわからない髪型をしている男が立っていた。
「マルコ」
サーヤはふっと微笑んだ。
「……いよいよだねい」
「うん」
サーヤはまた、島の上にある処刑台を見た。
「サーヤ、これだけは言っとくよい」
「……」
上の方で1つに括った肩より少し長めの髪の毛が風に揺れている。
「……あいつに何かあっても……絶対に死ぬんじゃねェよい」
「!」
サーヤはマルコを振り返った。
マルコはニヤリと笑った。
「わかってないとでも思ったかい?」
「……」
サーヤはふーと息を吐き出した。
(……やっぱり)
ーー敵わないな。ーー自分で勝手に思っといてなんだけど……こんな時なのにそんな呑気なことを考える自分はおかしい。
ーーそう、ここは海軍本部がある島マリンフォード。海兵の家族が住んでいる島でもある。
何故、サーヤが所属している白ひげ海賊団はわざわざ敵のいるこの島に来ているのかというと……それは遡ること数ヶ月前……。