第4章 〈サボ〉あなたの側にいたいから
「今、女の子の間で流行っている恋愛小説なんだって。この前行った島で見つけたの」
「へ〜」
サボはニコニコと笑った。
「どんな話なんだ?」
「えっとね……」
シェリアは少し顔を赤くして言った。
「ある男の子が海賊になることを決意して……その男の子のことを好きな女の子が海に行くのを引き止めるの」
シェリアは目を閉じた。彼女の長い金髪が風になびいている。
「でも……無駄だった……」
シェリアは切なさそうにサボを見た。
「だから、彼女は別のことを彼にお願いしたの」
『わたしも……わたしも海に連れてって!』
シェリアは優しく笑った。
「それで……どうなったんだ……?」
サボはおずおずと聞いた。
「どうなったと思う?」
シェリアは首を傾げてサボに問い返した。
サボはムッとして、シェリアに言った。
「聞いたのはおれだぞ? おれの質問に答えろよ」
シェリアは少し面白そうにふふっと笑ってから口を開いた。
「彼は彼女に聞いたの」
『……何で……そんなこと言うんだ? 海賊になるっていうことはとても危険なんだぞ? 何で……そこまでするんだ?』
サボは納得したように頷いた。
「確かにそうだよな〜。何で危ないのに『連れてって』なんて言うんだ?」