第3章 〈ONE PIECE〉愛してくれてありがとう
「そうだな……サボの件と……お前みたいな世話のやける弟がいなきゃ、俺は生きようとも……思わなかった……。誰もそれを望まねェんだ……仕方ねェ……!」
ーーロジャーの息子。海賊王の息子。それだけで、この世に生まれてきてはいけないと言われているような気がした。
「……そうだ、お前いつか……ダダンに会ったら……よろしく言っといてくれよ……。なんだか……死ぬと分かったら……あんな奴でも懐かしい……」
何か喋ろうとすると、涙が出そうで何も言えなかった。兄が死ぬことを認めるようで……。
「心残りは……一つある……。お前の”夢の果て”を見れねェ事だ……ハァ……だけどお前なら必ずやれる……!! 俺の弟だ……!!」
ーーおれと……そして、サボの。ーー思い出すのはサボが死んだ後、2人で約束した時に見えた海の景色……。
「あの日、誓い合った通り、おれの人生には……悔いは……ない……」
「嘘だ! 嘘つけ!」
何かが壊れるのを防ぐように必死に叫んだ。兄の体を支える手に力が入る。
「嘘じゃねェ……」
ーーたくさんの仲間たちの顔が思い浮かぶ。
「おれが本当にほしかったものは……どうやら“名声”なんかじゃなかったんだ……」
ーー親父、白ひげ海賊団、ルフィ、傘下の海賊団、マルコ、オーズ。
「おれは、生まれてきてもよかったのか、ほしかったのは……その答えだった」
ーールフィが助けに来て、海軍大将に立ち向かったこと。親父が……みんなが命懸けで戦ってくれたこと。ーーもう、答えは出ていた。
「ハァ……ハァ……もう、みんなに届くような声は出せねェ……」
その言葉が、兄の命が尽きることを意味していた。ーー嫌だ……。