第3章 〈ONE PIECE〉愛してくれてありがとう
人々が走る足音、刀と刀がぶつかる音、砲弾や人々の声が聞こえる。炎が所々で上がっている。ここは戦場、それらの音が聞こえてもいいはずだった。だけど……今はなんの音も聞こえない。ーー目の前にいる兄の声以外は。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「ごめんなァ……ルフィ。ちゃんと助けて貰えなくてよ……! すまなかった……!」
手に何か付いた感触がした。真っ赤な液体。ーー血。
「何言ってんだ! バカなこと言うな! 誰か手当してくれ!! エースを助けてくれェ!!」
白ひげ海賊団の救護班が走ってきた。
「無駄だ!! ハァ……自分の命の終わりくらい分かる……」
信じたくなかった。そんな言葉、たとえ大好きな兄から出た言葉だったとしても、聞きたくなかった……。
「内臓を焼かれたんだ……ゼェ……もう持たねえ……! だから……聞けよルフィ……!!」
兄の声が耳元で響く。これから起こるであろうことが頭の中を過ぎる。
「……何言ってんだ……エース、死ぬのか? ……約束したじゃねェかよ!! ……ハァ……ハァ……お前絶対死なねェって! 言ったじゃねェかよォ、エース~!!」
涙が溢れそうになる。それを必死で堪える。ーーそんな未来があるなんて、思っていなかった。