第19章 〈ロール〉お前とまた出会えた奇跡を
「……」
呑気に笑ったりキョロキョロしたり忙しなく表情の変わる麦わら屋を見て、おれは2年前のことを思い出した。
ーー2年前のマリンフォード頂上戦争から、おれは麦わら屋を逃す手伝いをした。助けた理由は自分でもよくわからなかった。ただの気紛れ。そう思っていた。しかし……。
ー麦わら屋をこっちへ乗せろ! そいつをここから逃す! 一旦、おれに預けろ! おれは医者だ!
そのまま、おれたちは麦わら屋を船の中へ運んだ。その後、誰かが投げた麦わら屋の麦わら帽子を受け取って、無意識におれは昔の自分に麦わら屋を重ねていたことがわかった。ーー大切な人を目の前で失う悲しみ、苦しみ、辛さ、そして怒り。
ーエースはどこだー!
ーあれを放っといたらどうなるんじゃ……?
女ヶ島に到着し、麦わら屋が目を覚まして暴走を始めた時にジンベエ屋に言われた言葉。
ーまあ、単純な話……この島に来た時にも言ったが、傷口が開いたら今度は死ぬかもな。
おれは後ろで暴走している麦わら屋を見て、冷たく答えた。
ー麦わら屋はあと2週間、絶対安静だ。
ーああ、分かった。世話になったな。
レイリー屋に麦わら屋を任せ、おれたちは女ヶ島を出た。その後、“最悪の世代”と世間から言われる面々が新世界で活躍しているのに対し、麦わらの一味は新世界へ来なかった。一部では麦わらのルフィは頂上戦争で死んだと噂されていた。