第19章 〈ロール〉お前とまた出会えた奇跡を
空から雪が絶え間なく降り続ける、パンクハザード島。この島にいると、なぜか無意識にあの日のことを思い出させる。
「“メス”」
俺はスモーカーの心臓をくり抜き、それを手のひらに乗せた。手の中で、奴の心臓の鼓動が大きく跳ねる。
「……」
ーこれから自分がやろうとしていることを他の人間に知られてはいけない。これは俺の問題だ。誰も巻き込むことはできない。邪魔されることも許さない。
「何一つ……お前に教える義理はねェ……」
スモーカーは雪の上へと倒れた。心臓をくり抜いただけだから、またすぐに起き上がると思うが。
おれは奴の心臓を持ったまま、建物の中へ戻ろうと歩を進めた。
「おーい! おーい! お前じゃんか! おれだよ、おれー! あんときゃ、ありがとなー!」
誰かの声が耳に入る。
(誰だ)
ーまだ、侵入者がいたのか……。
排除するために声のした方を向くと、そこには予想外の人物がいた。
「麦わら屋……」
どうしてこの島にあいつが……。
「おーい!」
茶髭の背中から降りて、おれの方へと笑顔で走って来る。
「……」
「こんなとこで会えるとは思わなかった! あんときゃ、本当にありがとう! あれ? あ……喋る熊たちは?」