第12章 〈サボ〉昔から変わらない
「悪いが、連れて……」
「怖いの?」
ーー彼女の口から出た鋭くて太いトゲがある言葉。おれは思わず、後ろを振り向いた。
黒くて長い髪の毛が海風に揺れる。凛と立って、おれを真っ直ぐに見つめる黒い瞳。
「わたしが死ぬのが怖いの? 守れないのが怖いの?」
「……」
ーー図星だ。彼女の言う通りだ。返す言葉もない。
「……お前の言う通りだ」
顔を俯けて、彼女を見ないようにする。
「おれは弱い。想像以上に弱い。エースとルフィとどれだけ鍛えても、この広い世界に出ればまだまだちっぽけだ。自分1人を守るだけで、精一杯だ」
「……」
ルリは黙ったまま、おれを見つめている。
「それなのに、お前を守ることなんて……情けないが、できる自信がない」
「……」
心の内を打ち明け、しばらくの間は2人とも何も言わずに黙っていた。
「……わたしは」
ルリが何かを言い始め、こちらへ近付いて来る。
「……わたしは、そんなに弱くないよ」
「!」
おれはその言葉に驚いて瞬きをする。
「わたしだって、みんなと一緒に過ごした。みんなと一緒に強くなった。そこら辺の人よりは……強いはずだよ? だから……」
涙目になって、黒真珠のようにキラキラさせた瞳と目が合う。