第12章 〈サボ〉昔から変わらない
「待って! サボ!」
日が昇り始めた朝早い時間帯、おれは荷物を持って生まれ育ったこの島を出ようと思っていた。ーー誰にも知らせずに。もちろん、エースとルフィにも。1人の力で、どれだけ世界と渡り合えるか知りたかったからだ。それなのに……。
「何だ、ルリ」
おれは立ち止まって、彼女を振り返ることなく聞く。振り返ってしまえば、未練がましくなってしまうから。
「わたしも……」
急いで走って来たのだろう。息切れ紛れに言葉を紡ぐ。
「わたしも……連れてって」
「……」
「あなたの旅に連れてって。昔、小さい頃に約束したじゃない!」
その約束はルフィと出会ったすぐ後、おれたちが海賊になると誓い合った時にエースとルフィには内緒でした約束。
ーおれがこの島を旅立つ時は……ルリも連れてってやるよ! 2人で世界中の海を旅しよう!
ー本当!? 本当にいいのね! 約束よ!
その時の嬉しそうな彼女の顔を忘れたことなんてない。ただ、それと共に感じた恐怖。海を旅するということは……“死”と隣り合わせだということ。もし、自分の目の前で彼女に何かあったら……それが怖くて仕方がなかった。ーー弱いのだ、自分が。