【ONE PIECE】もしもあなたが連れて行ってくれたなら
第4章 前夜祭
「……おれの力じゃ……できねェから……」
ウランは歯を食いしばって、体を震わせている。
ーー彼女たちに恨みはなくても、自分を酷い目に遭わせた天竜人を許したわけではない。今でも、彼の心の中には深い傷が残ったままだ。
「任せろ、ウラン」
「キッド」
後ろから酒が入ったグラスを持ったキッドがやって来た。
「おれたちが〈ひとつなぎの大秘宝〉を手に入れたら……必然的に海軍は黙っちゃいねェだろ」
酒を一口煽る。そして、口紅を付けた唇が弧を描く。
「おれは世界政府が気に食わねェ。天竜人もだ。自分たちが偉いと誰が決めた? それは力を手に入れた奴だけが言えることだ」
「……」
「気に入らねェ奴らはおれが全員ぶっ飛ばしてやるよ」
「キッド……」
ウランは椅子から立ち上がってキッドに近付き、彼の肩に腕を回した。
「お前はそう言ってくれると思ってたぜ。おい! 酒持って来い! 今日は呑むぞー!」
涙目になりながら、ウランは叫んで街の人たちのところへと行ってしまった。
「……キッド、いいのか? そんな約束して……」
「おれの本心だ。構わねェよ」
キッドはニッと笑う。