第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
「…………っ…、」
目を開けると、ぼやけた視界の先には真っ暗な森が見えた
ここはどこだと起き上がろうとしても何故か身体がまったく動かない
「(なに…?)」
背中にあたる感触から、大きな樹に寄りかかるように座っているのがわかった
それに何だか頭がボーっとする
私は覚醒しないままの脳内で必死に何があったのかを思い出した
「(………あ…!)」
そうだ
確か赤司さんを追い掛けて
屋敷に戻ろうとして、それで、
「…お、気が付いたか」
茂みから聞こえた声にそちらを向こうとしても、首どころか指先すら動かない
目だけをそちらに向けると、そこには灰色の髪をした男のひとがいた
妖しげに光る灰色の瞳は刃のようにぎらついている
気を失う直前に見たそれに、
私は思わず息を飲んだ
そうだ
私、このひとに……
「…………、っ」
誰?
私をどうするつもり?
そう聞こうと思っても、声が出ない
「(なん、で……っ)」
焦る私に気付いたらしいそのひとは、口元に勝ち誇ったような笑みを浮かべて私の前まで来ると、そのまま片膝をたててしゃがみこんだ
「、俺の名前は灰崎だ」
「……………」
「……ククク、そんな恐がんなよ、悪かったな、手荒な真似をして」
「……っ、」
「…ああ、大丈夫だぜ。ただ術をかけてあるだけだからよ」
術?
声が出ない代わりに目の前の灰色の瞳を睨み付ける
……なに
なんなの、このひと
「クククク…、そんなに怖い顔してっと綺麗な顔が台無しだぜ?」
「っ、」
「おお、怖い怖い
…さすがあの野郎に見初められただけのことはあるかもなあ…」
真剣さとはかけ離れた口調と、余裕綽々の表情
ただならぬ雰囲気に逆に恐怖を感じた
「…んじゃ、世間話はおいといて、
率直に言うけど、お前には赤司を倒すために利用させてもらうわ」
「…っ!?」
あっさりと言われた内容に、私は言葉を失った
…あ、いや
今は元々話せないのだけれど