第3章 不穏な心
目を泳がせると、先ほどのグラスが目に入った
本当に真っ赤だ
赤ワインだろうか?
…いや、赤ワインにしても赤すぎる
それも、透き通るような赤色だ
月の光に照らされてテーブルに映し出された影も赤い
…見れば見るほど、普通のワインには見えなかった
やっぱりワインにも怪物用があるのだろうか
「…気になるか?それ」
「あ…」
ワインを凝視していた私に気付いたのか、
赤司さんはそのグラスを持ち上げた
視線を追っていくと、赤司さんは顔の前でグラスを軽く振って中の液体を揺らした
「…それ、本当にワインですか?」
「そんなに血に見えるか?」
「いいえ、そうではなくて」
本当はそうだった
でも、あからさまに血だろう、と言いたくなかった
もしかしたら、赤司さんを吸血鬼だと思いたくなかったのかもしれない
「その、ワインにしては赤すぎるような…」
「……………」
首を傾げながらグラスを見ると、
赤司さんははぁ、と溜め息をついてグラスをテーブルに戻した
なんだか観念したようなその溜め息に
私は更に首を傾げた