第3章 不穏な心
距離を縮めていく赤司さん
身体が石のように動かなくなって、近付いてくる切れ長の瞳を私はただ見つめるしかできなかった
もう少しで唇がつきそうなくらいに顔を近付けたところで、こつん、という感触と一緒に赤司さんは動きを止めた
お互いの額がくっついていて、
読んで字の如く目と鼻の先で見つめ合う
どちらかが少しでも動けば唇が触れ合ってしまいそうなほど近い
そんな前例のない状況で平静を保っていられるはずもなく、私の心臓は胸を突き破って出て来るんじゃないか、という位に大きく、大きく脈打った
「…キス」
「!」
「されるかと思ったか?」
「な…、」
少しだけ意地悪な笑顔に、顔だけではなく体中が熱くなった
「……まぁ、またいつか、な」
「いつか、って……」
ぽふぽふ、私の頭を叩いてから赤司さんは顔を離した
…本当に、心臓に悪すぎる
何を考えているのか全く読めない彼に
私は心の中で盛大な溜め息をついた
とにかく恥ずかしくて、
私は辺りをきょろきょろと見渡した
何か、別の話題…!
赤司さんは「頑張って話し掛けなくていい」と言ったけれど
この雰囲気は頑張ってでも何とかしたい