第1章 吸血鬼、赤司征十郎
「は、はぁ…っ」
真っ暗な闇の中
普段は日の光に照らされて美しい葉脈を露わにする新緑の木々も、夜の暗さで真っ黒に染まっている
「ううぅ…」
「!」
ガサガサと茂みをかき分けて森の中を走る音に混じって、私の背後からは低い呻き声が聞こえた
その地を這うような声は、暗闇の中不気味に私の鼓膜を震わせた
「…っ」
こわい
誰か
誰か、たすけて
あまりの恐怖に、もつれてしまいそうな足で必死に地面を蹴る
あの声が追っているのは、紛れもなく私
もし捕まったら-…
「…だれか……っ」
たすけて
だれか、たすけて
私はその一心で、終わらない鬼ごっこの中を駆けていった