第4章 恨み憎む男ー灰崎ー
「あ、いいえ…違うんです」
「何が?」
「…私、祖先がオオカミなんです」
「…え?」
「私の血の何分の一かはオオカミなんです」
「やっぱりそうだったんスね!」
「え、何だよ黄瀬、お前知ってたのかよ」
「いや、どうりで初めて会った時なんか同じ匂いがすると思ったんスよ」
「匂いか?すげーなお前」
「あぁ、だからお前は赤司にあんなに血吸われても死ななかったのか」
「はい、血の気が多いみたいで…」
「…じゃあ、君達が村人から疎遠されてたっていうのは…」
「…私の家系が、オオカミだったせいです
オオカミと言っても、満月の夜に変身したり十字架が怖かったり人を襲ったりなんて、そんなことありません
ただ、普通の方より少し血の気が多くて爪が鋭いというだけなんです
ですが…、やっぱり、周りから見ると気味が悪かったみたいで…」
「なるほど…確かにそれはどうしようもねーな-…」
なるほど-、と納得している3人をとりあえず部屋から放り出す
なにすんスかー!お見舞に来たのに-!と騒ぐ彼らを無視して扉を閉めた
振り向けば、不安げに俺を見つめる名前がいた
「…怒っていますか?」
「どうして?」
「…だ、だって……」
「別に、人間だろうがオオカミだろうが君が名前だってことに変わりはないだろう」
「そうですけれど…」
「どちらにせよ、俺は君を離さないよ」
「!」
「…ところで」
言いながらベッドに戻って、また名前を抱き締めた
「血の気が多いって本当か?」
「あ…はい、
ですから、あなたの食欲にも応えられるかと…」
「へぇ…それは嬉しいな」
抱き締めたまま、ベッドに倒れ込む
起き上がる暇さえ与えずに名前を組み敷いて、上から彼女を見下ろした
「…あ、あの……」
「…愛してるよ、名前」
「!」
そう言うのと同時に俺は彼女の身体に覆い被さって、
首筋にキスをひとつ落とした
(それが始まりの合図)
(10年分、幸せにしてあげる)