第1章 Ⅰ おかえり
「そこに乾かしときなよ・・そこ、陽がよく当たるから」
「え、いいの・・? じゃあ・・」
彼女は濡れた楽譜を日なたにきれいに並べだした
「・・・七瀬くんだよね。楽譜拾ってくれてありがとう」
「なんで俺のこと・・」
「いつも渡り廊下から見えるよ、七瀬くんが泳いでるの。私は隣のクラスの藤木真咲。」
藤木真咲・・・。
向こうも俺のことに気づいていたんだな・・
「俺もいつも聞いてるよ」
「え・・?」
「藤木のトランペット。」
「え!あぁ、そっか。ごめんね、うるさかった?」
「別に。俺音楽とかよくわかんないけど、上手いなって・・」
あれ・・?俺何言ってるんだろ・・
「ふふっ・・ありがとう。」
藤木はまたやさしくほほ笑む。
ほほ笑むたびに俺の胸のあたりが熱くなる
どうかしてしまったんだろうか・・
彼女に会ってから俺の体はどこかおかしい