第3章 Ⅲ お前のために
「勝った・・・!」
ハルの名前とタイムが一番上に表示されていた
真琴「よしっ・・・!!」
渚「やったー!!ハルちゃん、すごい!!」
「よかったあー・・・」
全身の力が抜けた感じがした
よかった。本当によかった・・・!
ゴーグルとキャップを外し、ハルはプールから上がった
とくに表情を変えることもなくスタスタと歩く
でも私には少しハルが笑っているように見えた
私は立ち上がり急いでハルのもとに向かった
はやくハルに会いたくて
はやくおめでとうって言いたくて
階段を駆け下り、選手控室へと向かうと
ちょうど頭にタオルをかぶったハルが出てきた
「ハル・・・!」
「 真咲・・・!」
「おめでとう、ハル。」
「サンキュ。」
そういってハルは私の頭をくしゃっとした
ハルにそうされた瞬間
緊張が一気にとけて、視界がぼやけた
あれ・・・?なんで・・・涙が・・・
「え?、お、おい・・・!」
ハルは急に泣き出した私をどうしていいのかわからず
オロオロする
「ひっく・・・だって・・ほんとに嬉しかったから・・・!」
「わかった、わかったから泣くなって・・・!」
ハルは頭にかぶっていたタオルで私の涙を拭いた
「ハル~・・・」
思わず私はハルに抱き付いた
ハルはポンポンと私の背中をたたき、ぎゅっと抱きしめ返してくれた
「真咲・・・」
「・・・なに?」
「ジャージ・・・・」
「・・・あ、ごめんごめん・・・!はい。」
私はずっと抱きしめていたジャージをハルに渡した