第1章 Ⅰ おかえり
真咲…
真咲が帰ってくる…。
真咲は1年前、ドイツの学校へ音楽留学した。
中学での成績が認められ、向こうの学校から声がかかったきたそうだ。俺と真咲は同じ中学だった。
俺が通っていた中学は吹奏楽部の強豪校で何度も大きな大会で成績を残していた。そのなかでも真咲は主力メンバーのうちの一人で、全国に名の知れた有名人だ。
そんな真咲と俺がであったのは中学3年生の夏だった。
―中学3年生 夏―
俺はいつものように放課後一人でプールで泳いでいた。
水泳部はなく、授業でしか使わないプールには放課後俺くらいしか来ない。
真琴は塾や下の子の世話で忙しいらしく、めったにここへは足を運ばない。
♪~♪~♬
…あ。今日も吹いてる
2階の渡り廊下からいつも聞こえるトランペットの音
俺は音楽とかよくわからない
でもこのトランペットの音色はすごく心地いい
この音を聞きながら泳ぐのが俺の日課になっている
さすが全国上位の吹奏楽部だな・・・
素人の俺でもレベルが高いのが分かる
吹いている人の顔はわかる・・・名前は知らないけど。