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第3章 Ⅲ お前のために


「君たちは別々の中学に進学するんだ。」

寮長の思いもよらない言葉に私たちは驚いた。

黒崎「どうしてですか・・・?」

「全国各地の私立中学の吹奏楽部の強豪校から推薦状が届いている。授業料も下宿代もいらない、特待生だ。」

「「「・・・・・!!」」」

「それぞれ自分の出身地に近い学校に通うんだ。」

「そんな・・・」

「またみんなで演奏できると思ったのに・・・!」



「これから君たちは、チームメイトからライバルに変わる。それはたしかにつらいことだ。私も君たちを離れ離れにさせたくはない。しかし君たちはもうここ(寮)から出なくてはならない。残念だがこれは決まりなんだ。」

寮長は悲しそうに言った。

中学生になったら寮をでなければならない。それは知っていた。
家庭に事情を持つ私たちが、特待生で学校に通うことができるのは間違いなく寮長のおかげである。
私たちの幸せを思ったらこの決断は当たり前である。

でもやっぱり寂しかった。

なかなか首を縦に振ることはできなかった。



「しかしこれは君たちが大きく成長するチャンスでもあると思っている。」



寮長は大きな声で言った。

みんなが寮長を見上げた。


「今までは加波がリーダーとして中心に立っていた。しかしこれからは君たちみんながそれぞれリーダーになるんだ。チームを支える難しさを知ったとき、初めて人は大きく成長する。それをどうかみんなに味わってほしい。」


「「「・・・・・!」」」


寮長の目には涙があふれていた

私たちは泣いた

いっぱい泣いた

そして誓った

それぞれがチームのリーダーになって成長し、そして高校生になったらきっとまたみんなで一緒に演奏しようと。


そして今、誓い通り私たちは同じ高校に通い、また一緒に演奏することができたのだ。
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