第3章 Ⅲ お前のために
コンクール会場(ヒロイン視点)
日本に帰国してから初めての大きな大会
いつもどおり平常心で演奏すれば大丈夫・・・。
緊張はあまりない
黒崎「真咲。」
「・・・!かなちゃん。」
「緊張は・・・してないか。」
「うん。」
「相変わらずだなあ、真咲は。」
「かなちゃんだって、してないでしょ?」
「まあね。わくわくしてるよ。とても。」
「また5人で吹けるもんね。」
「あぁ。中学ではライバル同士だったけどな。」
「ほんと・・・、でも今なら、先生が私たちをバラバラの中学に入学させた意味が分かる気がするよ。」
小学校を卒業する前、私たちはみんな同じ中学校に進学すると思っていた。
というのも私たち5人はそれぞれ家庭に事情があり、小学生のころから下宿生活をしていた。
下宿といっても、一人暮らしのようなものではなく、みんなで一緒に食堂でご飯を食べ、お風呂に入り、寝る。
寮長のおじいちゃんは私たちを本当の子供のように接してくれたし、食堂のおばちゃんも優しかった。ちっともさみしくなんかなかった。
寮長が昔、音楽の先生だったため、私たち5人に楽器を教えてくれた。
それがきっかけで私たちは音楽の道に進み、いろいろな大会にも出場した。そしてなんども成績を残してきた。
6年生の冬、私たちは同じ中学に進学すると思っていた。
そして中学でもこのメンバーで演奏したいと思っていた。
しかし・・・