第1章 一、後押し。
フラフラしている私の様子に驚いた春草さんは、鴎外さんをきつく睨みつけている。
「これは…どういうことですか鴎外さん。」
「だから、言った通りだ。…副作用があるわけではないから安心したまえ。僕は少しまた出てくる。まだ仕事が残っていてね。…今夜は帰らないから、そのつもりで。」
鴎外さんはニコリと笑うと、春草さんの肩を1度だけ叩き、階段を降りていってしまった。
「…ねえ君、大丈夫?」
心配そうに顔を覗きこまれ、見られたくなくて、私はふるふると首を振る。
「とりあえず君の部屋に…。」
「嫌…です。」
「え?」
「春草さんと一緒にいたい…。」
春草さんは目を見開いて固まってしまった。
やがて細く息を吐き出すと、諦めたように言った。
「さっさと鴎外さんといなくなったくせに…俺は我慢するつもりだった。君が悪いんだからな。」
優しくなんてない、少し乱暴な手つきで腕を掴むと、春草さんは私を自分の部屋に押し込むようにして連れ込む。
そして、鍵をかけた。
* * *
扉に押しつけられるようにして動きを封じられ、噛みつくようなキスが降ってくる。
余裕なんてない、そんな雰囲気が伝わってくるほどに春草さんの息は荒く、同じように私の息も上がっていく。
「君が悪い。俺は、もっと大事にしようと思って我慢してたのに…っふ、んぅっ…。」
春草さんの舌が薄く開いた私の唇の間から入ってきた。
初めてのキスに、戸惑いで声が漏れていく。
「ふ、…ねぇ、鴎外さんにも、そんな声聞かせたの?はぁっ…君ってほんと、…許さない。」
「っあ!」
ベッドに勢いよく倒され、春草さんの熱に浮かされたような瞳と目が合った。
腰に回された手がゆっくりと動く度、ぴくりと身体が小さく跳ねる。
「敏感だね、感じてるの?」
クスクスと笑い声が耳元で響き、春草さんの吐息が耳にかかっただけでゾクゾクした快感が身体中をかけていった。
「そんなんじゃ、…ここ、大変なんじゃない?」
ちゅく。
「あっあ…!?」
器用に袴の紐を解き、春草さんは私の敏感なところに触れる。
恥ずかしいほどにとろけてしまっているそこを、春草さんはゆっくりと愛撫した。
「気持ちいい?」
「んっ…気持ち、いっ…です、あっぁあ…!」
「可愛いね。」
優しいキスをしながら、その指の動きはどんどん速くなっていく。