第1章 スマホの持ち主
私は昔から頑張り屋だと言われていた
そりゃ長女だし、早くに美容師の夢を追って上京した
今は、自分の店を持つ夢の為に
口うるさい上司に頭を下げ
技術もないくせに口だけは達者な後輩に
挟まれても、文句も言わないで仕事をこなしてる
それに、何年も見込みのない片思いしてても
相手を責めずに
ひたすら、振り向いてくれるように頑張ってる
こんな私を人は何と呼ぶんだろう?
不敏、不器用、馬鹿?
私は、片思いの相手にやっと取り付けたデートなのに
待ち合わせの噴水の前のベンチにて2時間も待ちぼうけをくらってた....
この寒空に、私の身体は冷えきっていた
2時間中、何回電話をかけても留守電になる
また他の子を優先か...
私の心は萎えていた
「.....また、ドタキャンか...」
せっかくの休みだったんだけどなぁ..
腹立つし、映画でも見て帰ろうかと思ってた時だった
私のとは違う着信音が聴こえる
私はキョロキョロと辺りを見回し、音の場所を探って行ったら、ベンチの下の草むらに隠れるように落ちてるスマホから鳴っていた
私は、スマホを取るとでてみた
「.....あのぉ、もしもし」
「あっ、良かった、やっと誰か出てくれた!」
声の主は男性で、この台詞から推測すると持ち主だと私は思った
「はい、ベンチの下に落ちてましたから」
「ベンチ? って何処のですか?」
「えっと、ここは丸楽公園の....」
私は、今いる公園の場所を告げると
「あーーーっ!昨日、そこに行ったわぁ!」
男の人の大声で耳が壊れるかと思った
それぐらい私は声に驚いた
「あのぉ、どうしましょうか?」
私はこのスマホの処分を考えていた
「今、空き時間あるから、今からそちらに行きます、たぶん....30分程で行けると思うので、待っててもらってもいいですか?」
私は、この寒空にまだここで待たなきゃならないのかと、
空を見てため息をついたが、他に方法もないので
「....分かりました、待ってます」
そう言い電話を切り、男の人を待つ事にした