【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第1章 【流川楓】 君に出会ったその日から
「ありがとな、もみじ」
ひざを故障して、バスケを引退するという道もあるかもしれない。
加州ともみじのためにサラリーマンになるのも悪くないかと思うこともあった。
この二人のためなら、呼吸を止めるのと同じことを選ぶ勇気があった。
「あ、パパ!」
そんな流川を、誰が“若すぎる、将来性のない父親”と呼べるだろう。
「あそこにバスケットゴールあるよ」
「よし」
もみじがフェンスで覆われたハーフコートを指差した。
小学生でも遊べるよう、プロが使うものより一回り小さい。
流川は愛娘を抱いたまま、ネットが取れてリングだけになったゴールに向かう。
「ダンクしてみるか?」
「うん!」
両脇の下を持って高く掲げてやると、もみじはその小さな両手でリングを掴んだ。
「ふんが!」
「誰のマネだ、それ」
「はなみち」
「ヤメロ」
高校の時から犬猿の仲であり、腐れ縁の花道を思い出して軽く不機嫌になる。
全日本ジュニア、全日本と同じチームでやってきたのに、bjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)ではライバル球団にそれぞれ進んだ。
そういえば、アイツも高校時代に選手生命をおびやかすケガをしていた。
あのケガから復帰してみせた花道が今の流川を見れば、腹を抱えて笑うだろう。
ヒザのケガごときでバスケできなくなるなんて、なんてヤワなヤツ。
・・・負けてらんねー。
久しぶりに感じるライバル心。
それが流川を大きく奮いだたせた。