【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第1章 【流川楓】 君に出会ったその日から
「パパのおひざが痛いの、知ってる。でも、バスケットしてるときのパパが一番かっこいい」
「もみじ・・・」
“ 前十字じん帯の断裂ですね ”
医者の診断は、自分にとって死刑宣告のようなものだった。
“ 手術とリハビリで10カ月・・・復帰までの目安は1年とみていいでしょう ”
“ 1年・・・それって、1年はバスケができねーってことっすか ”
“ そういうわけではないよ。リハビリ中にバスケットの動きくらいは・・・ ”
“ でも、試合は出れねーってことだろ ”
「パパがシュート決めるとね、すごくうれしい」
“ 選手生命は終わりじゃねーんだよな? ”
“ それは術後の経過を見てから判断したい ”
そのやりとりから、8カ月。
手術は上手くいったし、リハビリも順調だ。
「そーか」
だが、所属していたチームは流川との契約を延長しない旨を伝えた。
もともと単年契約だったし、そのうえシーズンをほぼ全休となれば、当然の処置だろう。
あと数カ月で、流川はバスケット選手でなくなる。
「もみじはパパにずーっとバスケットやってて欲しい」
ニコリと笑う、その笑顔。
父が抱えている状況など知る由もない。
でも、それでいいと思った。
「そーか」
もう一度、ムギュー攻撃を喰らわす。
今度は少し力を緩めて、ほっぺにチューのおまけ付き。
「おめーはやっぱり、ママと同じ・・・オレにとって初めての女だ」
キャーとくすぐったそうに笑うもみじ。
今は流川の言葉を理解できなくてもいい。
「バスケに出会って初めて・・・誰かのためにバスケがしてーって思った」
バスケをするのは、流川にとって呼吸をするのと同じ。
誰かに言われてやるようなものではなかった。
しかし、もみじの言葉で今、バスケがしたくてしたくてたまらない。
明日、朝一で代理人に電話してみよう。
もし現チームと契約延長できないのなら、移籍先を探してくれと・・・