【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「風船はどうする?」
手の中にあるハート形の風船。
すると、加州はニコリと笑い、その手を離した。
フワフワと、星空へ飛んでいくピンク色の風船。
「いいのか?」
「はい。あの風船はきっと、笑顔になるべき人が拾ってくれると思います」
「・・・そうか」
見ず知らずの、可愛い女の子。
私は今、悲しくはないよ。
ありがとう。
「じゃあ、しばしの別れだ」
「さようなら、恋次さん」
恋次が刀の鞘を加州に向ける。
「魂葬」
柔らかな光が加州を包んでいた。
だんだんと視界が薄くなっていく。
手足の感覚が無くなっていく中、不意に体を抱きしめられたような気がした。
「絶対に俺のことを忘れんじゃねぇぞ」
遠くなっていく声。
加州の顔に笑みが浮かぶ。
「好きだ」
最後の言葉は聞き取れなかった。
しかし、加州の霊体が消える瞬間、優しいキスを唇に感じた。