• テキストサイズ

【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに

第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い






今、一つの魂が消えた。



空一杯に広がる星。

それを見つめる死神の姿は、普通の人間には見えない。


「向こうでも笑顔でいろよ」



野良犬のような、孤独な目。
でも、だからこそ優しさを知っている。

自分以外の誰も孤独にならないように、と・・・








河川敷から商店街へとつなぐ、大通り。
一人の女性の足元に、萎みかけた風船が落ちる。


「あれ? これは私がさっき・・・」


それを拾い上げた彼女のウィンドブレーカーには、『Flower Shop Yamaguchi』の文字。
ちょうど注文を受けていた花を届けにきたところだった。

首を傾げていると、交差点のところにある電信柱に、3人の高校生が立っているのが見える。

一人はオレンジ色の髪をした男の子。
他の二人は、黒髪の小柄な女の子と、可愛らしくてスタイルの良い女の子だ。

そこで事故があったのか、花を供えている。


「どうしたの?」


その三人を見ているうちに、声をかけずにはいられなくなった。
この手にしている風船が引き寄せたのかもしれない。

すると、オレンジ色の髪をした子が顔を上げた。


「数週間前・・・ここの横断歩道を渡っている最中に過呼吸を起こした奴が、事故にあって死んだ」


そこは、さっき加州が過呼吸を起こした場所の近く。
苦しさのあまりうずくまっていると、左折してきた車にはねられた。


「でも今日、成仏できたみたいだから・・・花を供えていたんだ」


何をもってしてそう語るのか、花屋には分からない。
しかし、高校生達の顔を見ていると、それが本当のように思えた。

供えられている花に歩み寄り、持っていた風船を結びつける。


「今日はバレンタインだもんね。たくさんの愛情に包まれて、幸せになって」


どこの世界でも。
今日は大切な人との愛を確かめる日だから・・・



一護、ルキア、織姫が空を見上げる。
花屋の店長も空を見上げる。



綺麗な星が瞬いていた。







Fin.







/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp