【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「私は死んでしまったんですね」
「ああ・・・胸のところに鎖がついているだろ?」
指差したところに触れると、確かに鎖のようなものがついていた。
長さ30センチほどで切れてしまっている。
「それは“因果の鎖”といってな、少しずつ短くなっていくもんなんだ。そして、全部なくなるとお前は“虚”になる」
「ホロウ・・・?」
「生きている人間に害を与える、悪しき霊体のことだ。そうなると、俺らがこの刀で斬らなければならなくなる」
「私は・・・あと僅かでそうなってしまったかもしれないんですね」
悪霊となってあの河川敷に留まり、好きな人に取り憑いていたかもしれないのか。
「だから、恋次さんは早く告白するように急かしていたのか・・・」
「お前に蛇尾丸を向けたくねぇからな」
それは、その刀の名前なんだろう。
恋次の腰元で鋭く光っている。
「さっき、私がフラれればいいと言ったのも・・・私の気持ちがどこか別のところに向かえばいい言ったのも、そのためだったんですね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そうすればちゃんと成仏して、地縛霊にならないから・・・」
すると、恋次は眉根を寄せながら首を横に振った。
「違う! イヤ・・・違わねぇんだけど・・・あの言葉はそれだけの意味じゃねぇ」
頰を髪の毛さながら真っ赤に染める。
そして、まっすぐと加州を見つめた。
「オメーのことが放っておけねぇから、俺のことを見てればいいと思った。そうすれば・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「虚になって一番に襲うのは俺だろうから、他に被害が出ねぇだろうし・・・」
こんな気持ちは・・・初めてだ。
ルキアにすら抱いたことはない。
「何よりも、オメーを絶対に虚にはさせねぇ」
寂しい気持ちには絶対にさせない。
ちゃんと尸魂界へ導いて、新たな生を受けるまで見守る。
「ありがとう・・・恋次さん」
加州の目から再び涙が溢れる。
しかし、今度は悲しみからくるものではなかった。