【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「あれ、今日も見に来てくれてたんだ!」
彼は加州の方を向いて、嬉しそうに白い歯を見せた。
「え・・・私のこと・・・」
確かに彼はこちらに顔を向けている。
しかし・・・
加州を見てはいなかった。
「だって、バレンタインなのに一緒に居られないのは寂しいじゃん!」
背後から聞こえてくる、明るい声。
彼が見ているのは、加州の後ろにいた活発そうな女子高生だった。
胸元には、加州のものよりも立派に包まれた箱を持っている。
「私よりサッカーを選ぶなんて酷いカレシだなー」
「ゴメンゴメン!」
一緒にサッカーをしていた仲間から囃し立てられながら、まるで加州のことなど見えていないように横を通り過ぎる。
もう付き合って長いのだろうか。
彼女からプレゼントを受け取ると、愛しそうに頭をポンポンと叩いた。
そんな姿を見ていたら、こんな貧相なトリュフなんてあげられない。
「おい、加州?」
いたたまれなくなって、その場から逃げるように走った。
そんな加州に彼は気づくはずもなく、恋次が慌ててその後を追う。