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【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに

第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い




「買ってきたぞ! 体調はどうだ?」
「はい、大丈夫です」
「その風船はどうした?」

恋次は、加州が持っている風船を見て怪訝そうな顔をしている。
ついさっきまでは、こんな風船は持っていなかったはずだ。

「向こうの歩道を歩いている、あの親子の娘さんからもらったんです」

「・・・さっき横断歩道の所ですれ違った子か・・・?」


恋次は意外そうな顔で父親に甘えている少女を見ていたが、のんびりしていられないことを思い出したようだ。
慌てて持っていた袋からリボンを取り出し、加州に突き出す。


「ほらよ」


それは、赤いサテン生地のリボン。
恋次の髪の毛と同じ色だった。


「・・・これじゃまるで恋次さんへのプレゼントみたい」

「オイ、文句は言わねぇ約束だぞ」

タトゥーが入った眉をひそめる。
もうその顔を怖いとは思わなかった。

リボンを受け取り、トリュフが入った袋の口を縛る。
少しいびつな蝶々結びとなってしまったが、見栄えは悪くない。


「いけね! 早く行かねぇとガキ共が帰っちまうな。急ぐぞ、加州」

「はい」


体調はもう大丈夫なようだ。
女の子からもらった風船とともに河川敷へと急ぐ。

すると、グラウンドの方から賑やかな声が聞こえていた。


「よかった、間に合ったみてぇだな!」

「・・・・・・・・・・・・」


友達と汗を拭きながら笑っている。
その笑顔を見て、胸がドキンと鳴った。


「おい、どうした? 行けよ」


土手の上に停めてある自転車。
それに乗って帰られたら、もうこのチョコレートを渡す機会はない。


「加州!」


恋次が急かすように背中を押した。

行くなら・・・今しかない。


袋を握りしめ、意を決して歩き始めたその時。





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