【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
強烈な息苦しさと胸の痛みで、視界が揺らぐ。
意識が遠のきそうになっていると、ピンク色のハートが漂っているのが見えた。
「風・・・船・・・?」
それは、ピンク色のハート型をした風船だった。
「おねえちゃんにこれあげる」
とても可愛らしい声。
幻聴・・・?
いや、違う。
小さな手が見える。
脂汗を滲ませながら目を凝らしてよく見てみると、5歳くらいの女の子が立っていた。
フワフワの髪の毛をピンク色のリボンで留め、まるでお人形さんのような顔立ちをしている。
そして、持っている風船を加州に差し出してきた。
「この風船をあげる」
「・・・どうして・・・?」
「だって・・・おねえちゃん、とても悲しそうだったから」
ガラス玉のように大きな瞳。
まるで・・・教会にある天使の絵のような少女だ。
「この風船は、悲しい気持ちをなくしてくれるんだよ」
真っ白な紐の先には、淡いピンク色のハート型をした風船。
小さな手からそれを受け取ると、その女の子はニッコリと笑った。
その瞬間、不思議と息苦しさや痛みが消えていく。
「お嬢ちゃん、ありがとう」
自分も笑顔を見せると、その子は嬉しそうに目を輝かせる。
頭を撫でてあげようとした瞬間、少し離れた横断歩道の所から声が聞こえてきた。
「もみじ」
「パパ!」
それは恋次と同じぐらい高身長の男性で、黒髪に涼しげな目元が印象的な男性だった。
スポーツをしている人なのだろうか、どこかのチーム名が入ったジャージを着ている。
「うわ・・・すごい格好いい人・・・」
“パパ”と呼ばれていたが、兄妹といってもおかしくないほど若い父親だ。
少女は手を繋いでもらうと、ピョンピョンと飛び跳ねながら横断歩道を渡っていった。
その微笑ましい親子とすれ違うように、恋次が戻ってくる。