【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第1章 【流川楓】 君に出会ったその日から
「ひっく・・ひっく・・・」
おしりが冷たい。
手も冷たい。
涙で濡れたほっぺも冷たい。
もっともっと悲しくなって、“ふえぇん”と声を上げた時だった。
「もみじ」
物静かな低い声に顔を上げる。
それは、ずっと待っていた声だった。
「どんだけ探したと思ってる。心配かけんじゃねー、どあほう」
「パパぁ・・・」
言葉はキツいけれど、声はとっても優しい。
ブランコのそばにやって来ると、身長190センチの大きな身体を屈めて、涙と鼻水でグチャグチャの顔を上着の袖で拭いた。
「帰るぞ。ママも必死になって探してる」
「・・・いやだ」
「なんで 」
「だって・・・」
ションボリと肩を落として、チェック柄のスカートを見つめる。
「ママに意地悪なこと言っちゃったから」
「なんて?」
「・・・ママなんかだいっきらいって・・・」
いつからここに居たのだろう。
その小さな体はすっかり冷えている。
足元には“るかわ もみじ”と名前が入ったポシェット。
家出のつもりだったのだろうか、蓋から大好きな人形と棒付きキャンディが覗いている。
「・・・ママのこと、嫌いなのか?」
「・・・・・・・・・」
父親譲りの小さな口をグッと曲げる。
「だってママ、いつもパパをひとりじめするんだもん」
それは流川も予想していなかった言葉だった。