• テキストサイズ

【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに

第1章  【流川楓】 君に出会ったその日から






キーコ・・・
キーコ・・・・・・


夕暮れの公園に、ブランコの音が響く。


だぁれもいない、砂場。
小さな手形がいっぱいついた砂山には、半分だけ掘られたトンネル。
早く向こう側の景色がみたいのに、真っ赤なスコップと一緒に存在を忘れらている。


キーコ・・・
キーコ・・・・・・


夕暮れの公園に、一つだけ揺れているブランコ。


だぁれもいない、すべり台。
すべるところが緑、のぼるところが赤、立つところが黄色、それに水色の屋根がついた、この公園のシンボル。
みんな大好きなのに、いまはポツンと寂しそう。



キーコ・・・
キーコ・・・・・・


地面にようやくついている小さな足。
お気に入りのピンク色の靴を履いているのに、元気にブランコを揺らしてはいない。


「ひっく・・・ひっく・・・」


まぁるいほっぺを伝う、何粒もの涙。
鎖をギュッと掴んでいる手には、細い糸が握り締められている。


その上には、靴と同じ色をしたハート形の風船。



「ひっく・・・ひっく・・・」


だぁれもいない、夕暮れの公園。
とても寒くて、寂しくて、悲しくて、涙が止まらない。


風船が“泣かないで”と言っているかのように、北風に揺れていた。






/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp