【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第1章 【流川楓】 君に出会ったその日から
キーコ・・・
キーコ・・・・・・
夕暮れの公園に、ブランコの音が響く。
だぁれもいない、砂場。
小さな手形がいっぱいついた砂山には、半分だけ掘られたトンネル。
早く向こう側の景色がみたいのに、真っ赤なスコップと一緒に存在を忘れらている。
キーコ・・・
キーコ・・・・・・
夕暮れの公園に、一つだけ揺れているブランコ。
だぁれもいない、すべり台。
すべるところが緑、のぼるところが赤、立つところが黄色、それに水色の屋根がついた、この公園のシンボル。
みんな大好きなのに、いまはポツンと寂しそう。
キーコ・・・
キーコ・・・・・・
地面にようやくついている小さな足。
お気に入りのピンク色の靴を履いているのに、元気にブランコを揺らしてはいない。
「ひっく・・・ひっく・・・」
まぁるいほっぺを伝う、何粒もの涙。
鎖をギュッと掴んでいる手には、細い糸が握り締められている。
その上には、靴と同じ色をしたハート形の風船。
「ひっく・・・ひっく・・・」
だぁれもいない、夕暮れの公園。
とても寒くて、寂しくて、悲しくて、涙が止まらない。
風船が“泣かないで”と言っているかのように、北風に揺れていた。