【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「シケた面してんじゃねぇよ」
「・・・はい」
「俺はな」
夕日を浴びて、きつく編み込んだ髪の毛がより赤く光る。
心なしか、少し頰も赤い。
「心のどっかで、オメーがフラれればいいと思ってる」
「え?」
「そうすりゃ、オメーの気持ちがどこか別のところに向かうだろ」
その言葉をどう受け取っていいのか分からず、言葉がすぐに出てこなかった。
どこか別のところって・・・
それって、もしかして・・・
加州が顔を上げた瞬間。
それまで肩を抱いていた恋次の手が離れる。
「おい、あそこにあるんじゃねぇか?」
「え?」
そこは商店街を抜けて大きな通りに出たところで、恋次は反対車線の向こう側を見ている。
指差す方を見ると、そこには小さな手芸店。
「リボン、売ってんじゃねーか?」
「あ・・・」
大きな道路。
信号待ちをしている車の列。
歩道橋を渡るおばあさん。
チカチカと点滅している歩行者用信号。
チカチカと・・・
「どうした、顔色が悪いぞ」
「ごめん・・・あの点滅に気分が・・・」
真っ青で冷や汗をかいている加州を見て、恋次の表情が変わる。
冗談ではないことに気がついたようだ。
「わかった・・・じゃあ、俺が行って買ってきてやる。何色でも文句言うんじゃねぇぞ!」
「あ・・・りがとう・・・」
「ここで待ってろよ!」
自分が過呼吸持ちだということを忘れていた。
初対面の人と長時間一緒にいた緊張が、一気にきたのだろうか。
苦しい・・・
痛い・・・
「はっ・・・はっ・・・」
胸が痛い・・・