【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「今日はありがとう」
トリュフが固まり、ラッピングが終わる頃には4時を回ろうとしていた。
「リボンだけ無かったから、どこか途中のお店で買ってね」
織姫が申し訳なさそうに言う。
チョコレートの材料からラッピング用の小袋まで用意していてくれたのだが、リボンだけ買い忘れたらしい。
一護が妹の裁縫箱を漁ってくれたが、どれも女の子っぽすぎてサッカー好きの彼には似合わなそうなものばかり。
仕方がないので、途中で買っていくことにした。
「俺達は見送りに行かねぇけど、頑張れよ加州!」
一護が加州の肩を叩く。
いつも気難しそうな顔をしているが、誰よりも面倒見が良い。
きっと、このメンバーのリーダー格なのだろう。
「また会おうな」
ルキアが綺麗な笑顔を見せる。
時々毒舌だが、気品に溢れていて優しい。
芯がしっかりとしている女性だ。
「私達のことを忘れないでね」
織姫が手を握る。
少し天然だが、心優しくて気配りができる。
一護のことを想っているのがよく伝わってきた。
「ありがとう、みんな」
みんなで作ったチョコレートだと思ったら、勇気が湧いてくる。
きっと想いを告げることができるだろう。
「行くか、加州」
一緒に来てくれるのは、恋次。
「はい」
最初は危険な人物かとすら思った。
しかし、この背中を支えてくれる手はとても大きくて暖かい。
夕日が空座町を染め始めている。
きっと今から向かえば、サッカーが終わる時間に間に合うだろう。
見ず知らずの女の子からいきなりチョコを渡されて、あの人はどんな顔をするだろうか。
ほんの少しの期待と、緊張、そして恐怖で体が震える。
すると、隣を歩く恋次がそんな加州の肩を抱いた。