【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「井上さんはチョコレートを作っていなかったけれど、誰にもあげないの?」
「え、わ、私は・・・」
可愛い顔を真っ赤にして、しどろもどろになる。
すると、ルキアがクスクスと笑いながら食器棚を指差した。
「そこに隠しているつもりなのだろうが、バレバレだぞ」
棚の陰に置いてあるのは、ピンク色のリボンがついた箱。
「まぁ、一護は鈍感だから気が付かないだろうがな」
「わっ、朽木さん! シィー!!」
「案ずるな。一護なら恋次と蹴球のゲームに熱中していて、どうせ私達の話など聞いていない」
慌てる織姫に、笑顔のルキア。
その向こうにケンカしながらゲームで遊んでいる一護に恋次。
初対面なのに、まるで前からの友達のように受け入れてくれる。
ずっと寂しい思いをしていた自分にとって・・・
「加州?」
「加州ちゃん?」
とても嬉しくて、涙が出た。
「ごめん・・・なんだか分からないけれど、最近すごく寂しくて」
「・・・・・・・・・・・・」
「両親とも友達とも上手くいってなくて・・・まともに話しかけてくれたのは、恋次さんぐらいだった」
ルキアと織姫は、突然の加州の涙に困惑しているようだった。
自分でもどうしてこんな気持ちになったのか分からないが、胸が苦しくて涙が出てくる。
「フラれたらどうしようっていう不安もあるけれど・・・こうして、みんなで楽しくお菓子作りができたのがすごく嬉しい」
「加州ちゃん・・・私達でよければ、いつでも遊ぶよ?」
織姫がギュッと抱きしめてくれる。
柔らかい胸がとても温かい。
「そうだ、遠慮する必要はないからな!」
ルキアも励ますように手を握った、その時。
「あ、ルキア! 加州を泣かせてんじゃねぇよ!」
「ば、莫迦者! 泣かせてなどおらぬわ!」
ゲームに飽きたのか、恋次と一護も台所に入ってくる。
最初は怖い人達だと思ったが、こうして話しているととても温かい。
騒がしい恋次や一護達を見ているうち、それまで感じていた孤独や不安が全て消えていた。