【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「あとは冷えるまで1時間くらいかな。そしたら丸めて、ココアパウダーを振って終わりだよ」
「ありがとう」
すると、手を洗っていたルキアが悪戯っぽい笑みを向けてくる。
「ところで、加州はどのような男に惚れているんだ?」
「私? いつも土曜日に河川敷のグラウンドでサッカーの練習をしている人なんだ」
「名は?」
「知らない・・・だから今日、このチョコレートを渡して告白しようと思う」
恋次さんが背中を押してくれたしね。
そう言って微笑むと、ルキアと織姫も笑顔を見せる。
「ほう・・・あいつも良いところがあるではないか」
「ルキアさんのチョコレートは恋次さんに?」
「恋次などにやるわけがないだろう。私は・・・」
それまで古風で固い口調だったルキアが、突然頰を赤く染める。
「私は、兄様にお渡しするために・・・」
「お兄さん?」
「ああ・・・義理の兄だ」
義理の兄・・・?
兄様と呼ぶところから察するに、ルキアはどこかの令嬢なのだろうか。
その瞬間、加州の脳裏に恋次の言葉が蘇る。
“ オメーを見てると、俺の幼馴染を思い出すんだよ。今は違うが、昔はよく寂しそうな顔でずーっと遠くを見ていてな」
“ どうにか笑顔にしてやりてぇって思うのに、遠くに行っちまったアイツに俺がしてやれることはねぇから歯痒かった ”
「もしかして、ルキアさんと恋次さんって幼馴染ですか?」
「ああ、腐れ縁と言った方が良いがな」
そんなことを言っていても、ルキアは笑顔だった。
この人のおかげで・・・恋次さんは自分に声をかけてくれたのか。
「ありがとう、ルキアさん」
「礼を言うなら、私よりも井上に言った方が良いだろう」
「そうだね! ありがとう、井上さん」
「うん!」
本当に楽しかった。