【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「加州ちゃん、チョコレートはもっと細かく刻んだ方がいいよ」
「は、はい」
黒崎家の台所を借りて挑戦するのは、トリュフ。
クッキーも考えたが焦げたら大変なので、一番失敗のリスクが低いものを選んだ。
「井上っ、生クリームが沸騰しているんだが!?」
「わ、朽木さん、生クリームは沸騰させちゃだめ! 火を止めて止めて!」
簡単なことが難しい。
なのに、不思議と楽しい。
こうしてみんなでお菓子作りなど初めての経験で、最初は戸惑っていた加州にも笑顔が浮かんでいた。
自身もプレゼントを作るというルキアと一緒に、織姫の指導のもとチョコレートを作っていると、ずいぶん前からの友達でいるような気がする。
「そうそう、かき混ぜながら加州ちゃんが刻んだチョコレートを入れるの」
「なるほど」
よっぽど大事な人へのプレゼントなのか、ルキアの目は真剣そのものだった。
泡立て器でゆっくりと混ぜているうちに、チョコレートが生クリームに溶けてなめらかになる。
甘い良い香りが立ち込め始めた。
「これでオッケ! うーん、隠し味に鯖缶でも入れておく?」
「サバ?!」
「アクセントになって良いと思うんだ」
「なるわけがないだろう!」
思わず、ルキアと声を揃えてしまう。
そして顔を見合わせて吹き出した。
こんなに楽しいのは久しぶりだ。
ホント、いつ以来だろうか・・・。