【CDC企画】Pink Heart Balloonをあなたに
第2章 【阿散井恋次】 野良犬の願い
「それはいつなんだよ?」
「2月14日です」
「てことは、来週の土曜日か」
「そうです」
すると恋次は、顎に手をあてて少し考え込むような仕草を見せた。
「今日じゃダメなのか」
「て・・・手作りのチョコレートを渡したいんです。今日はもう間に合わない」
それは苦しい言い訳の気持ちも含まれていた。
男の子に手作りのチョコレートをあげたのはいつが最後だっただろう。
もしかしたら小学生の頃かもしれない。
「・・・俺もそんなにヒマじゃねぇんだが・・・まあ、大丈夫だろう」
「え? 付いて来る気ですか?!」
「当然だろーが。テメーがバックレるかもしれねぇだろ」
「う・・・」
なんで他人のこの人に監視されなければいけないのだろう。
そもそも、なんで告白を強制されているのだろう。
加州は半分泣きそうになりながらも、心のどこかでこの強引な赤髪の男に感謝をしていた。
もし彼が現れなければ、自分は永遠にこの土手から彼を眺めるだけに終わっていたかもしれない。
名前を交換することもせず、いつかはあの笑顔を見ることができなくなっていただろう。
もし、告白をすれば彼の記憶のほんの片隅でも自分の存在を残すことができる。
「じゃあ、加州。来週の土曜日、朝10時にここで待ち合わせだ」
「な、なんでですか?」
「手作りの菓子を作るんだろ?! 俺も手伝ってやる」
「結構です・・・」
「オメーが逃げねぇようにだ。オメーに選択権はねぇぞ」
ジッと睨まれる。
“ハイ”としか答えようのない目つきに、加州は力なく頷いた。
「分かりました・・・よろしくお願いします」
結局、恋次の押しの強さに負け、1週間後にずっと秘めてきた想いを告げることとなった。